こんにちは、元経理事務のポツンママです。
先日配偶者の扶養に入る要件を記事にしましたが、平成30年以降の所得税について控除を受けられる範囲が変更になることを知ったので、今日は法改正後の税扶養について書こうと思います。
この記事の目次
夫の税金を減らせる配偶者の控除が2つある
年末が近づいてくると、夫が年末調整の書類を2枚持ち帰ってきますよね。
1枚は「家族の中で誰を扶養するか」を申請する書類で通称『マル扶』。
書類右上に扶養の扶を○で囲ってあるからこう呼んでいます。
もう1枚は、1年間で払った保険料などを申請する書類。
こちらは『マル保』。保険の保を○で囲ってあります。
マル扶の方には「配偶者控除」「扶養親族」という言葉が、マル保の方には「配偶者特別控除」という言葉が載っていますが、これは果たしてどういうものなのでしょうか。
配偶者控除なんて難しい言い方してるけど
税金関係の用語って漢字が多くて堅苦しいから、羅列されてるのを見るだけで「ウッ…」てなりますよね。
できるだけかみ砕いて説明してみます。
とりあえず、控除ってなに?
ウィキペディアによると、『控除(こうじょ)とは、ある金額から一定の金額を差し引くこと』となっていますが、主に税金やお給料の計算で使われることが多いです。
おおまかに説明すると、
同じ額の収入を得ていても、独身の人もいれば一家の大黒柱の人もいる。
家庭の事情はそれぞれあるのに同額の収入を得ているというだけで、一律の税金を課すのは酷な話。だから、納税額の計算のときに個々の事情に応じて、既定のルールに基づいた金額を差し引きましょうということ。
≪個々の事情の例≫
- お父さん一人で家計を支えている家庭から税金をたくさん取ると家計が大変だろうから、養っている家族の人数に応じて一定額を差し引きましょう
- 今年は病気やけがで医療費をたくさん使ったならその分も差し引きましょう
- ふるさと納税をしたならその分も差し引きますよ など
それじゃ配偶者控除ってなに?
一般に『扶養に入る』と言われるのがこの配偶者控除です。
いわゆる103万円の壁と言われるアレ。
よくあるパターンで説明すると、
- サラリーマンの夫とパートの妻の夫婦
- 妻のお給料を103万円までに抑えたら、妻の分の所得税はかからない上、夫の所得税は節税できます ってこと
夫の所得税を計算するときに先程の『控除』がいくつか使えるんですが、そのうちの1つが配偶者控除で、38万円を差し引いてもらえます。
控除が多いほど税金を安くすることができるので、できるだけたくさんの控除を受けたいですよね。
ちなみに、要件を満たせば妻が個人事業主でも、夫は配偶者控除を受けることができますよ。
詳しくはここに書いてあります。
配偶者特別控除は「特別」ってついてるけど
「税金が掛からないのは103万円までっていうのはわかったけど、103万円を1円でも超えたらダメなの?」と問われたとしたら、答えは「Yes」です。
具体的な例を出すと、時給895円×6時間×週4日×4週間×12ヶ月で103万円を超えますので、配偶者控除を受けたいパート主婦は時給や働く時間を調整して、お給料をこの範囲内に収める必要があります。
でも、残業したりシフトの穴埋めをしたりで、超えてしまうこともあるかもしれません。
103万円までは所得税が掛からないのに、103万1円になったら急にドーンと課税されてしまうと困ってしまいますよね。
そんなときの救済措置がこの配偶者特別控除です。
「特別」ってついてるけど、配偶者控除より好条件というわけではないです。
お給料が103万円を超えたら、急に妻は課税され、配偶者控除38万円もなくなって夫の所得税も跳ね上がってしまうなんて…!
という後悔があるかどうかはわかりませんが、103万円を1円でも超えたらバサッと控除を打ち切られるのは辛いもの。夫の所得税は急に数万円単位で上がってしまいます。
それはちょっと厳しいよね、ということで設けられたのが配偶者特別控除です。
現行では、妻のお給料が103万1円~141万円までの間で控除が受けられます。
配偶者控除とは異なり、控除額は一律ではなく妻のお給料に応じて変わります。
高給取りは控除が受けられない
現行の配偶者特別控除は、納税者(夫)の給与収入が1220万円(所得1000万円)までの人しか受けられません。
つまり、高額所得を得ている人には適用されないんですね。お金持ちは優遇しなくても税金払えるだけの財力があるでしょっ、ていう。
ちなみに『103万円の壁』の配偶者控除のほうは、平成29年度までは所得制限なしです。
103万円⇒150万円の壁に?平成30年からの配偶者控除
「配偶者控除の所得制限が平成29年度まで?今年までってこと?」と気付いたあなたは鋭い。
今回の法改正のポイントの1つはそこ。
平成30年からの配偶者控除は、納税者(夫)の所得制限が設けられます。
平成30年からの配偶者控除等のポイント
- 配偶者控除を受けられる要件として納税者本人(夫)の所得制限が追加
- 配偶者特別控除に設けられていた納税者本人(夫)の所得制限が段階式に
- 所得控除38万円を受けるための配偶者(妻)の給与収入の上限が103万円⇒150万円に
- 妻のお給料201万円までが配偶者特別控除の対象に
扶養の要件に『夫の年収上限』が加わる
来年からは「配偶者特別控除と同じく、高額所得者は優遇するのやめることにしたから税金を払ってくださいね、お金あるでしょ」っていう非情な制度になってしまいます。
年収帯ごとに控除額が設けられ*1、給与収入のみの場合このように控除額が減っていきます。
(*1 正確には所得ごとに控除額が設けられていますが、わかりやすくするために年収ベースで書いています)
※夫の年収⇒控除額で記載
- 年収1120万円以下 ⇒今までどおり控除38万円
- 年収1120万1円~1170万円 ⇒控除26万円
- 年収1170万1円~1220万円 ⇒控除13万円
- 年収1220万1円以上 ⇒ 控除なし
配偶者特別控除の所得制限が細かくなる
現行では配偶者特別控除を受けられるのは年収1220万円(所得金額1000万円)までと書きましたが、来年からはこちらも年収帯ごとに分けられます。
- 控除を受けられるのは年収1220万円まで
- 配偶者(妻)の収入に応じて控除額が異なる
- 妻の給与が増えるにつれて、夫の控除額は減っていく
- 配偶者控除同様、1120万円・1170万円・1220万円で区切る
- 控除額は夫の年収×妻の年収のマトリックスで決まる
妻の給与収入の上限が103万円⇒150万円に
来年から所得控除38万円を受けるための妻の給与収入上限が、103万円⇒150万円に引き上げられます。
今まで103万円の壁と言われていたのが『150万円の壁』になるということですね。
ただ、妻の給与上限額が上がるのは配偶者控除ではありません。特別控除のほうです。
本当にややこしいですよね。
配偶者特別控除を適用する人を年収帯ごとで区切り、その一番下の年収帯の控除額が配偶者控除と同額、という話なんです。
控除額をざっくり書いたものがこちら。
でも、パート収入の上限額が上がったからと言って手放しで喜べるわけではありません。
見落としがち!103万円を超えたら妻には所得税がかかる!
「103万円の壁が150万円に上がりますよ!」と色々なところに書かれていますが、『妻に所得税がかかる』ことについては触れられることが少ないんですよね。
法改正されて、妻の年収150万円まで所得控除38万円を受けられることになっても、所得税が課税されるラインは103万円超のままです。
この所得税の課税ラインが150万円に上がったわけじゃないんです。
だから、『税金の扶養に入る』という定義をどこに置くかが難しいところなんですが、
- 平成29年まで
⇒妻の税金が掛からないで、夫の税金も安くできるラインが103万円
- 平成30年から
⇒妻の税金が掛からないで、夫の税金も安くできるラインは103万円
⇒妻の税金を払う必要があるけど、夫の税金は安くできるラインは150万円
ということなんですね。
ちなみに住民税がかかるラインはもう少し下で、100万円がボーダーです。
まとめ
- 妻の税金が掛からず、夫の税負担が軽くなるのは今までどおり103万円まで
- 妻が所得税を払うけど、夫の税負担を今までどおりにできるラインが150万円まで
- 配偶者特別控除で夫の税負担を少し軽くできるのは201万円まで
- 高給取りは妻を扶養に入れることができなくなる
今までの配偶者控除は、夫婦両方の税負担が軽くなっていました。
今回の法改正では妻の収入を増やしても夫の税負担はそのままということをアピールポイントにしているもの、中をよく見てみるとそんなに良くなったようには思えない、というのが個人的な感想です。
夫の税金は変わらないように見せてるけど、暗に「パート収入を増やして、主婦は自分のぶんの税金を払ってください」と言われている気がする
主婦は、「誰の」「どの税金」を節税するかを考えてパート収入を調整しましょう。